保険料が戻ってくる医療保険と掛け捨て型医療保険の違い
貯蓄型医療保険は、健康で保険を使う機会がなかった場合や解約時などに保険料の払い戻しを受けられるため「保険料が無駄になった」と感じにくいのがメリットです。
一方、掛け捨て型は戻ってくるお金はない代わりに、貯蓄型よりも割安な保険料で手厚い保障を備えられるというメリットがあります。
どちらにもメリットだけではなく、デメリットが存在します。以下で詳しく違いを見ていきましょう。
保険料が戻ってくる医療保険(貯蓄型医療保険)デメリット
貯蓄型医療保険は、掛け捨て型保険とは異なるデメリットがあります。
デメリットを十分理解した上で、加入を検討しましょう。
貯蓄型医療保険のデメリット
・必ず保険料が戻ってくるとは限らない
・インフレリスクがある
・途中で解約すると元本割れする
・保険料が割高になっている
必ず保険料が戻ってくるとは限らない
貯蓄型医療保険の大きな魅力は、一定の条件を満たせば祝金や健康還付金などの形式で、保険料が戻ってくる可能性がある点です。
しかし、祝金や健康還付金を受け取るためには「給付金を一切請求しなかった場合」「?日以上の入院給付金を請求しなかった場合」など、特定の条件を満たす必要があります。
病気やケガはいつ起きるかわからないので、期待通りの祝金や健康還付金をもらえないこともあるでしょう。
祝金や健康還付金に過度な期待をしてしまうと、必要な時期にお金を受け取れず、ライフプランが崩れてしまうことも考えられます。
インフレリスクがある
貯蓄型医療保険のうち、未使用の保険料が戻ってくるタイプの商品は、一見無駄がなく魅力的に見えます。
たとえば、「100万円の保険料を支払い、60歳時点で給付金の請求がなければ、支払った100万円が健康還付金として戻ってくる」といった契約であれば、「損をしないのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、健康還付金を受け取るタイミングでインフレが進行していると、受け取るお金の価値が目減りしてしまいます。
一方、100万円を医療保険以外の金融商品で運用していれば、より増やすことができた可能性もあります。
貯蓄型医療保険に加入することで「支払った保険料が戻ってくる」という安心感は得られますが、支払った保険料以上にお金が増えることはほとんどありません。
むしろ、インフレが進行した場合には、その影響を大きく受けることを理解しておきましょう。
途中で解約すると元本割れする
一般的な貯蓄型医療保険は、保険料払込期間中に解約すると、解約返戻金が払込保険料の総額を下回ります(元本割れ)。
とくに契約してから数年で解約した場合に、この傾向は顕著です。
保険会社は契約者から預かった保険料を、全額運用しているわけではありません。
保険会社の運営費用や給付金を支払うための費用などを差し引き、残った分を積立金として運用し、解約返戻金に充てています。
契約してすぐは、運用の成果が十分に積み上がっていないため、解約返戻金が少なくなることがほとんどなのです。
貯蓄型保険は、基本的に長期間継続することを前提に加入する必要があります。
保険料が割高になっている
貯蓄型医療保険は、保険料が一般的な医療保険に比べて高めに設定されています。
これは、保障費用だけでなく、貯蓄に回すお金が保険料に含まれているためです。
このため、同じ医療保障を受けるだけであれば、貯蓄機能がない保険のほうが保険料は安く済むケースが多くなっています。
保険料が戻ってくる医療保険(貯蓄型医療保険)メリット
貯蓄型医療保険は、医療保障と資産形成を両立したい人に適した保険です。
貯蓄型医療保険のメリットを詳しくみていきましょう。
貯蓄型医療保険のメリット
・健康でもお金が受け取れる
・貯蓄の代わりに利用できる
健康でもお金が受け取れる
貯蓄型医療保険では、一定期間を健康に過ごし、給付金を請求しなかった場合などに、支払った保険料が戻ってくる仕組みがあります。
掛け捨て型の医療保険では、病気やケガをしなければ保険料がそのまま会社に支払われるだけですが、貯蓄型の医療保険なら、健康で過ごせば保険料が返還されるため、保険料の無駄を感じにくいでしょう。
また、定期的にお金が受け取れることが、健康維持のモチベーションアップにもつながるかもしれません。
健康であればあるほどお得感を感じられるのが、貯蓄型医療保険の特徴です。
貯蓄の代わりに利用できる
貯蓄型医療保険は、将来的に解約返戻金やお祝い金を受け取れるため、貯蓄代わりに活用可能です。
通常、貯蓄を行うには預貯金や金融商品の積立などが必要ですが、貯蓄型医療保険であれば、毎月の保険料支払いが貯蓄につながるため、手間が省けます。
特に「解約返戻金タイプ」の医療保険では、途中で解約した場合や契約満了時に、支払った保険料の一部が返戻金として手元に戻ってきます。
毎月支払う保険料が高ければ、その分受け取れる解約返戻金やお祝い金も多くなるため、教育資金や老後の生活資金など、将来のライフイベントに備えることも可能です。
掛け捨ての医療保険のデメリットとは
掛け捨て型医療保険の最大のデメリットは、入院や手術といった「もしものこと」がなければ給付金は一切支払われず、保険料も戻ってこないという点です。
例えば、掛け捨て型の医療保険に30年間加入し、毎月5,000円の保険料を支払った場合、払込保険料の総額は180万円に達します。
しかし、その間病気やケガで入院・手術などをすることがなければ、受け取れるお金は全くありません。
また、数回入院したとしても、受け取れる給付金が払込保険料の総額を上回るケースは少ないでしょう。
掛け捨て型の医療保険は、健康に過ごしている人ほど「保険料が無駄になった」と感じやすい仕組みになっています。
掛け捨て型医療保険を利用する際は、費用をかけずに大きなリスクに備えるという割り切った考え方が必要です。
掛け捨て型医療保険のメリット
掛け捨て型医療保険には貯蓄型とは異なり、資産形成機能はありません。
しかし、医療保障に特化したシンプルな仕組みだからこそ、得られるメリットもあります。
割安な保険料で加入できる
掛け捨て型医療保険は、貯蓄型医療保険のように返戻金が発生しない分、手頃な保険料で充実した医療保障を確保できます。
例えば、同じ保障内容の医療保険に加入する場合、貯蓄型よりも掛け捨て型の方が毎月の保険料は低くなる傾向にあります。
また、医療保険は終身タイプと定期タイプの2種類に分けられます。
- 終身タイプ:一生涯保障が続くタイプ
- 定期タイプ:一定年数、一定年齢で保障が終わるタイプ
定期タイプを選択すれば、より保険料を抑えて充実した保障を得られるでしょう。
ただし、更新のある商品の場合は、更新時に保険料が高くなる可能性もあるので注意が必要です。
契約途中での見直しがしやすい
掛け捨て型医療保険は、ライフステージの変化に合わせて保険の見直しがしやすい点もメリットです。
貯蓄型医療保険のように、解約返戻金や祝金の支払いタイミングを気にする必要がなく、必要性を感じた時にすぐ見直しができます。
特に、定期タイプの商品であれば、更新や満期のタイミングで定期的に見直しができるでしょう。
貯蓄型医療保険が向いている人
貯蓄型医療保険が向いている人の特徴は以下の通りです。
貯蓄型医療保険が向いている人
・貯蓄が苦手な人
・ライフプランがある程度決まっている人
・家計に余裕がある人
貯蓄が苦手な人
貯蓄が苦手な方は、自由に使えるお金が増えるとつい使ってしまうことが多く、計画的な資金確保が難しい場合があります。
しかし、貯蓄型保険に加入すれば、毎月決まった期日に自動的に保険料が引き落とされるので、半ば強制的にお金を貯められます。
また、途中解約すると元本割れする可能性があり、預貯金のようにお金を自由に引き出しにくいため、貯蓄を継続しやすいでしょう。
貯蓄ができる保険の種類や選び方をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
ライフプランがある程度決まっている人
貯蓄型医療保険は掛け捨て型と比べて保険料が割高になる傾向があるため、毎月の保険料を無理なく支払える家計の余裕がある方に向いています。
貯蓄型医療保険は将来的にお金が戻ってくるものの、契約期間が長期になるほど、支払う保険料の総額も増えるため、負担感が大きいと感じることも少なくありません。
無理なく保険料を支払える状況であれば、返戻金やお祝い金を楽しみにしながら長期間継続できるでしょう。
また、貯蓄型保険は途中解約すると元本割れするリスクがあります。
家計に余裕があれば、途中解約する可能性も少なくなるでしょう。
保険のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談
保険料が戻ってくる医療保険は、掛け捨ての医療保険に比べると保険料が割高になる、途中で解約すると元本割れするといったデメリットがあります。
一方で、健康に過ごしている場合でもお祝い金を受け取れたり、それまでに支払った保険料が戻ってきたりする点がメリットです。
掛け捨て型の医療保険は、基本的に保険料が戻ってくることはないため、もったいないと感じるかもしれません。
しかし、割安な保険料で加入できる、柔軟に見直しができるといったメリットもあるため、「もったいないから」という理由だけで貯蓄型の医療保険を選ぶのはやめておいた方が良いでしょう。
貯蓄が苦手な人や、高額な保険料を払い込む余裕のある人などは貯蓄型医療保険に加入するとよいかもしれません。
反対になるべく保険料を抑えたい人や貯蓄と保障を分けたい人などは掛け捨て型医療保険を選ぶと良いでしょう。
どちらの医療保険を選べば良いのか、自分だけで判断するのが不安な人は、保険のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談をしましょう。